病気の話
外耳炎について
犬の外耳炎は、現在の動物病院で最も多く治療されている病気の一つで、各動物病院それぞれ独自の経験や知識を基にした治療法が行われているように思います。垂れ耳の犬は、蒸れやすいので外耳炎になりやすいと認識されている飼い主さんが多いのですが治療している側の実感として、耳の形状以上に、その子の持つ体質が大きな要因になっていると感じています。外耳炎になる一番の要因は、その子が持つ体質(アレルギー、アトピー、脂漏症、ホルモンバランスなど)が挙げられ、この要因や環境要因により、常在細菌叢のバリアー機構が崩れ、細菌や真菌が異常に増殖できるようになります。常在細菌とは、健康な動物の皮膚や消化管などに住みついている菌群のことで、外部からの病原性の高い菌群の侵入などを防御してくれています。
外耳道は、酵母様真菌(マラセチア)が高率に存在していて、バリア機構を担っています。体質などが原因で、外耳のバリア機構が崩れると、大人しくしていた菌の異常増殖が可能となり、1cm2当たり16000個ほどの細菌や真菌が認められるようになります。顕微鏡で耳の汚れの検査を行い外部寄生虫(耳疥癬など)や細菌の状態を把握します。
外耳炎を放置しておくと、慢性的な経過による外耳の皮膚が厚くなり、耳垢腺の異常な活動増加が進み、耳洗浄や飲み薬では治せない外耳炎に移行する場合があります。
外耳炎の治療
- 外耳道の炎症の有無の確認、耳垢(正常な耳あか)なのか耳漏(病的な耳あか)なのかを判断し治療を行います。
健康な耳では、自身の自浄作用で耳垢が表面に出てくるため、目に見える耳垢を取るだけに留めます。
炎症や耳漏が認められる場合は、洗浄液を用い、用手又はシリンジにて耳道内洗浄を行い、手造り綿棒で外耳の細胞を傷つけないように気を付け、耳漏を除去し、必要な点耳薬を塗ります。
その子がなるべく怒らないように、なだめながら治療を行うことで鎮静剤や麻酔をける必要はありません。 - 初期、または四季の変化により悪化が認められる中程度の外耳炎であれば、一次的な内科療法を併用するかもしれませんが、基本的には外用での維持を目的とし治療を行います。(抗生剤やステロイドの全身投与を極力避ける努力を試みます)
- 慢性化した難治性の外耳炎で、内科や外科治療に反応しない場合、高度医療機関での精密な検査が必要な事があります。
外耳道だけの問題なのか、中耳、内耳なのに起因していないか精密的な判断してもらうことを勧めます。